水溶性メディウムを使う

水溶性メディウムは海外ではwater friendly medium(Fusemaster社)、water-based painting medium(Reusche社)などと呼ばれ、顔料メーカーを中心に色々な物が出回っているようです。私自身はReusche社のD1368という商品を主に使っていますが、日本で容易に手に入る陶器絵付け用品店で扱っている「水溶性メディウム」、通販でも扱っているプロピレングリコールも同様に使えます。水溶性メディウムを上手く使えれば焼成回数を減らすことにもつながります。昨今、エネルギー価格の上昇で電気代やガス代も大幅に上昇しています。更にはエコが叫ばれる中、私自身も積極的に水溶性メディウムを取り入れていこうと思います。

以下の写真は水溶性メディウム(Reusche社製D1368)を使い、焼成せずにどこまで描き込めるか試したものです。この試作ではこの辺りで十分でしたが、この先も描き込み自体はまだまだ可能でした。

酢溶きグリザイユによる作業 : 酢溶きグリザイユを全体に施した後、同じ酢溶きグリザイユで線描きを行う。その後の作業を考慮し、ガムは少し多めに。このサンプルでは線描きは二回行っている。最初に原稿を下に於いて線を追った後、原稿をはずして一度目の線描きを補強するように二度目の線描きを行った。この一連の作業は水溶きグリザイユでも可。

明るい部分を剥がし取る。ガムが多めのグリザイユが剥がしにくい時は、息を吹きかけると剥がしやすくなる。

 

水溶性メディウムによる作業 : 絵付けを施した部分が完全に乾いたら全体に膜を作る様に水溶性メディウムを施す。水溶性メディウムをバジャーブラシで伸ばしたり、布やキッチンペーパーで押さえるように拭いた後、水溶性メディウムで溶いたグリザイユで濃淡を意識しながら描き込みを行う。

ステンドグラス絵付けは、一般的には水や酢(赤ワインビネガーや白ワインビネガー)で溶いた顔料(グリザイユ)を使って作業をし、線描き、調子(陰影)付けと工程ごとに窯で焼成しガラスに焼き付けます。キャンバスに描く絵画のように描き込んでいくのとは逆に、全体に顔料を掛け明るい部分を剥がしとっていくという技法が基本です。描写が繊細であったり細かかったりする場合には調子付けを繰り返し、結果焼成回数が増えることにもなります。これは水や酢で溶いたグリザイユは重ね塗り、重ね描きが難しいことにもよります。乾いたグリザイユの上にグリザイユを重ねようとすると筆で下のグリザイユを剝がしとったり、それまでの作業を台無しにしてしまうこともあります。絵付けの指導書では「乾かないうちに描き足す」という記述もありますが、水や酢で溶いたグリザイユはすぐに乾いてしまうのでなかなか思うようにいきません。

そこで使ってみたいのが水溶性メディウムです。水溶性メディウムは水や酢で溶いたグリザイユで作業をした上に施してもそれだけではそれまでの作業状態を壊しません。但し、水溶きや酢溶きで作業をした後にそのまま水溶性メディウムを使う場合の注意点としては、絵付け部分全体に水溶性メディウム(あるいは水溶性メディウムで溶いたグリザイユ)を薄く掛けてそれまでの作業を保護するということです。この作業をせずに直接水溶性メディウム溶きグリザイユで上描きをすると、下の水溶き(あるいは酢溶き)で行った作業を筆が引っ掻き取ってしまう可能性があります。一方で、絵付け部分全体に掛ける水溶性メディウムの量が多すぎるとその後の作業が非常にしづらくなります。水溶性メディウムで溶いたグリザイユで描き込もうとしても、ベースの水溶性メディウムがビチャビチャした状態ではうまく描き進めません。絵付け部分全体に水溶性メディウムを施した後にキッチンペーパーや布で軽く押さえるように拭い取り、バジャーブラシで伸ばしてから描き込みの作業をすると、描き込み作業もスムーズになります。

最後に参考となるリンクを貼っておきます。水溶きグリザイユとプロピレングリコールを使って1回の焼成で仕上げる工程をステージ毎に動画も使って詳細に伝えています。The Stained Glass Beast from Start to Finish – All in a single firing by David Williams

こちらの動画も早回しですが、プロピレングリコールを使って描き込んでいる様子がよく見て取れます。